君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
2.アイツの生き方。私の生きる場所 -晃穂-
「ごめん、紀天。今終わったから。
有名になってファンが増えたのはいいけど、
本当にいろいろとあるよねー。
私が知らなかっただけで、私たちが大好きになったSHADEでもこんなことあったのかな?
あの頃は、もっと常識を知ってたって思いたいね」
朝から、いつもの日課になっている作業を終えてデューティーであり、
現私の上司でもある宝珠さまの元にデーターを作成して報告し終えると、
私はパソコンの電源をとりあえず落とした。
今日は、アイツの休暇なんだ。
私も「休みなさい」って、宝珠様に念押しされた。
PCを落としてアイツ視線を向けると、
アイツはベランダから外をボーっと眺めながら、
何か考え事してるみたいだった。
話題、変えないとね。
話題。
アイツのことだから、私以上に思い悩んでそうだから。
そう思った私は、まずはアイツの聴覚を刺激しよう作戦。
私とアイツにとっての思い出のサウンド、
SHADEのアルバムをコンポに入れて再生ボタン。
わざと音量をあげて、アイツの様子を見ながら鼻歌交じりに、
覚えてしまった歌を口ずさんでみる。
あの頃、私と紀天が追い続けたSHADEも四年前に解散しちゃった。
そんなSHADEが、今年の九月に一日限りで復活するってアイツ情報掴んでるのかな?
行けるなら……アイツと行きたいって思うのは、
私の我儘かな?
それくらい……許されないかな?
そんなことを思いながら遠い昔……アイツに、
LIVEデートをぶっちされた苦い思い出が蘇る。
だけど……覚えてなくても、私にはあの日……怜さんが自らかけてくれたらしい
その時のオフィシャルグッズのバスタオルがあって……。
今日まで歩き続けた、アイツとの時間には
ずっと……SHADEが関わって来てたから。
「あっ、懐かしい。
SHADEじゃん」
ようやく気が付いてくれたらしい紀天が、
ベランダから部屋の中へと入って来る。
そしてアイツは自分の鞄からドラムスティックを取り出して、
同じく取り出した、ゴム板の上で、音楽にあわせてゴム板を刻み始めた。