君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
3.ライヴハウスでの出逢い~Rapunzel~ -紀天-
「紀天、伊吹と一緒に出掛けられないかい?」
高校生活最後の年、大学生になった智早さんからメールを貰って
急きょ、顔を出すことになった夏休み。
俺は、三年間親睦を深めて、多少の可愛さを増した
伊吹を連れて、思い出のLIVEハウスへと足を運んだ。
「お邪魔します」
普段の趣をガラリと変えた「本日貸し切り」と
札がかけられた、場違いなドアを恐る恐る開けて中へと入る。
LIVEの際は、観客たちでギッシリと埋まるその空間も、
今日は普段の趣をガラリと変えて、テーブルとイスが
適度な空間をキープされて配置されている。
ドリンクやアルコールらしきものを片手に、
テーブルを動き回る見慣れた、SHADEのメンバー。
思わず、その場でフリーズする。
「紀天?」
尊夜に何度目かに名前を呼ばれた後、
俺はふっと我に帰ると、俺の前には智早さんが姿を見せた。
「紀天、伊吹、よく来たね。
夜のSHADEパーティーに。
って言っても、SHADEって言うくらいだから俺が主催じゃないんだけどね。
さて、怜さんに挨拶行こうか」
そう言って、俺たちは智早さんと共に
SHADEのメンバーの方へと向かった。
キョロキョロと少し挙動不審な俺と違って、
尊夜はドンと肝が据わってるようにも映る。
「怜さん、今日はお誘い有難うございます。
うちの二人、連れてきました」
そう言って、智早さんが怜さんに話したのをきっかけに、
憧れの人の視線が俺に向けられる。
「久し振りだね。廣瀬、瑠璃垣。
学院祭以来かな?
今日は楽しんでいってくれ。
智、来て早々悪いが羚とお前。後は隆雪。
最後に俺の親戚、梛【なぎ】。
とりあえず、五人でセッションしておいて」
怜さんに指名されたメンバーが次々と、
楽器に手にステージへと上がって行く。
指名されたメンバーの中には、学院祭の時に
一緒に演奏した、悧羅校の宮向井の姿も確認した。
軽くそれぞれの音鳴らしをした後、智早さんのドラムから
次から次へと音が重なりはじめて、曲らしいものが出来ると
ボーカルが、言葉とは思えない言葉で、メロディーを歌いあげていく。