君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
そんなセッションの始まりに、気をつられていると……
次の瞬間、「あの後は、廣瀬と瑠璃垣にも上がって貰うよ」なんて
サラリと恐ろしい一言。
「光範【みのり】さん、こいつらにソフトドリンクお願いします。
後、カウンターで好きなもの注文して作って貰っておいで。
此処に居るのは、皆、俺が出逢った音楽仲間たちだから。
いろんな人と話を聞いて、いろいろと参考にしたらいいよ。
じゃ、このセッションの後で」
そう言って怜さんは、また忙しなく呼ばれるままに会場内を動き始める。
「なんか、凄いですね。
この場所」
「だよなぁー。俺、場違いな気がしてきた……。
ドラム叩いてるって言っても、まだ未熟だしな。
それよか、何注文するよ」
そんな会話をしながら、カウンターの方へと移動して、
ハンバーガーとピザを注文して、近くのテーブルへと着席しながら
ステージを見つめる。
指名されてすぐ、打ち合わせも何もなく始めたはずのセッションなのに、
何時の間にか全ての音があわさって、一つの音楽に重なり合ってる現実。
ステージの中で、お互いにコンタクトを送りながら
心から楽しんでる、そんな表情に心奪われる。
何時の間にか、そんなセッションが終わって、
演奏してた人たちがステージを後にしていく。
「次……、ギターは俺と八代【やしろ】ツインであがる。
ベースは友樹【ともき】。
ドラムは紀天、ボーカル・伊吹」
怜さんの声が再び聞こえる。
「紀天、呼ばれちゃったよ。
行きますか?」
フットワークの軽い尊夜と正反対の俺。
「お願いしまーす」
そう言って、尊夜は真っ先に、輪の中に打ち解けていく。
メンバーそれぞれが、アンプに相棒を繋げて
調弦していく中、俺もドラムセットの方へと近づいた。
「紀天、気張る必要はないから。
じゃ、紀天から行ってみようか。
思うようにリズム叩きだして」
怜さんに言われるままに、スティックを打ち鳴らしてから
ビートを刻んでいく俺のドラムに、ベースの友樹と言われた奴の音色が被さっていく。
リズム隊の音色が上手く落ち着いてきたところで、
怜さんのサドウスキーの音色がメロディアスに響いていく。
その後、その音色に重なるようにもう人のギターが重なっていく。
二人目のギターの音色をカバーするように、瞬時に音を調整しながら
全体的なサウンドをコントロールしていく怜さん。