君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
7.Ansyal~懐かしい仲間~ -紀天-
Rapunzelを抜けた夏、俺は尊夜のばあさんの店でずっとバイトさせて貰った。
尊夜のばあさんの店、priere de l'ange(プリエールデランジュ)。
あの店は、瑠璃垣志隠が、唯一、志隠として過ごせる場所でもあり、
咲空良さんが堂々と、我が子・尊夜に会える場所になってた。
priere de l'ange(プリエールデランジュ)は音楽BAR。
フロアー内には一通りの楽器が並び、
生演奏でJAZZが流れる、そんなお洒落な店。
この店に来るまでは、Jazzなんて縁もなかったが
俺が親しんできた音楽と違っていても、ドラムのサウンドを耳にすると
染みついた感覚からか、無意識のうちに手足を動かし続ける。
Rapunzelを抜けて一ヶ月。
俺はアルバイトと、時折スタジオに顔を出してはドラムに没頭しながら
日々を過ごした。
夏休みも終わりかけた頃、いつもの様にバイトを終える。
「紀天君、もういいわよ。お疲れさん。
あぁ、さっき志穏から電話があったよ。
お前さんに話したいことがあるから、店に居てくれだとさ。
本社に顔出してからこっちに来るから、
もう少し待っててやって。
さぁ、これでも飲んで」
そう言って、カウンターに俺用の飲み物を入れてくれる。
カウンターチェアに座って、肘をつきながら出された飲み物に口をつける。
夜のお客さん向けに、大人なムードに店内は昼間の様子から様変わりする。
ドアが開いてOLさんらしい女性が数人店内に入って来る。