君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
12.奪われた自由 -晃穂-
私は冷たいコンクリートっぽい床の上に、
寝転がされた状態で気が付いた。
周辺に私以外の人の気配は感じられなかった。
後ろ手に縛られた縄から解放されたくて、
床に寝転がったまま腕を必死に動かしながら、
取り乱すことないく、自分のおかれた状況を整頓している私がいた。
アイツがバンドを始めるようになって、
今までにもいろんなことがあった。
刃物を突き付けられたり脅されたこともあった。
何度も警察沙汰寸前のめにあってきた。
そんなヤツが、紀天のファンだって名乗ってるのも許せなかったし、
アイツが大切なモノを好きだって言うのも許せなかった。
アイツを守る陰になるって、そうやって決めた時から、
何時かはこんな日が来るって思ってた。
覚悟はしてた。
やられた分だけ、きっちりと落とし前はつける。
ずっと紀天にも言わずに、そんなスタンスで
突っ走って来てたはずなんだけど……油断した……。
AnsyalファーストLIVEツアー「降臨祭」から19日目のファイナル。
多分、私の存在が目障りすぎて、こんな目にあっちゃったんだろうけど……
だけど警察沙汰だけは絶対に御法度。
Ansyalのファン同士で争って、警察沙汰になって
メンバーに迷惑なんてかかろうものなら申し訳が立たない。
それは私が一番恐れてることだから。
だから全部、アイツにも事実を隠しながら
上手く立ち回ってたつもりなのに……しくじった。