君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】


昔から体を使うことは得意だったはずなのに、
大学生になって運動不足になったかなー。


自傷気味に呟きながら、
私は両手両足を縛られた縄を解きたくて
必死に手を動かす。





鈍い痛みが走る体。


手足が不自由なまま、
何とか床を転がって壁際まで近づく。


壁を伝って何とか体を起こすと、
その場所で、必死にくくられた腕を動かした。



最初感じていた、縄が擦れるような
ヒリヒリとした痛みもやがて感じなくなる。



それでも必死に動かし続けた腕は、
ようやく縄解きのきっかけが生まれてスルリと解放された。


そのまま足にくくられた縄を必死に解いて投げ捨てる。


最後に、アイマスクをはずすと真っ暗な空間に
視界が慣れ始めるのを待って、壁に手をついてゆっくりと立ち上がった。


埃を少しでも払いたくて、
立ちあがって洋服をパンパンとはたく。



埃が落ちてるかどうかなんて暗すぎてわからなかったけど、
それでも、それをしないと心が落ち着かなかった。



ドアに向かって、ノブを回そうとするものの
外からかけられているらしい鍵は開く気配がなかった。




ぐるりと倉庫の中を見回しても、
ガラス窓一つない。



せめてガラス窓でもあれば、ガラスをぶち破ってでも
この場所から抜け出すのに。



やっぱり、唯一の出口はそのドア一つか。




携帯があれば、助けを求めることも出来たけど、
今回ばかりは仕方がない。



私が持ってた鞄は、ここに閉じ込めたあいつ等が
一緒に奪っていったみたいだった。
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