君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
今回のLIVEは、二階は全て関係者ばかりの部屋になっているらしくて、
エレベーターが開いたと同時に招待されていたらしい関係者の人たちが姿を見せる。
「えっと、どちらに?」
「右端の奥の部屋へ連れて行って貰えるかな?」
指示されるままに、車椅子を押して
個室へと案内すると、怜さんは疲れたように車椅子に持たれた。
「怜さん?」
「大丈夫……。
人に寄ってしまったかもしれないね。
薬を飲めば落ち着くと思うから、宝珠にいって水を貰って来てくれないか?」
指示されるままに、個室を後にしてエレベーターで一階へと降り、
ミネラルウォーターのペットボトルを手に、再び部屋へと戻ると、
誰かが怜さんと会話をしているみたいだった。
ノックをすると中から、少し高めの声が聞こえる。
「どうぞ」
「失礼します。怜さんに頼まれたお水をお待ちしました」
「有難う。
怜のことで心配させたみたいだね。
向こうの招待席に居るから、体調が悪いと感じたら怜はすぐに連絡するんだよ」
そう言うと、その人は個室から出ていった。
「西園寺天李【さいおんじてんり】先輩。
裕最高総の時代に、高雅大夢【こうがひろむ】先輩と並んで、3トップだった一人だよ。
君も悧羅の人間ならわかるだろ」
わかるも何も……私にとっては雲の上に近い名前。
だけど……アイツにとっては身近な名前。
「天李先輩は、今の俺の主治医だよ。
主治医付のLIVEだから安心していいよ」
心配していたのが余程顔に出ていたのか、
そう言って怜さんは口にすると手渡したミネラルウォーターで、
何種類かの薬を服用して静かに目を閉じた。
17時の開場時間が過ぎて、1階フロアーはファンで埋め尽くされるようになる。
会場までの間、ドリンクを交換したり、グッズを購入したり、プレゼントボックスに
ファンレターやプレゼントを入れていく、ファン一人一人の時間。
ステージの上では、関係スタッフがいろいろとテスト的に音出ししながら、
開演に向けての最終チェックを始めていく。
もうすぐLIVEが始まる。
携帯電話を握りしめながら、時間をチェックした時
宝珠さまの名前が、液晶に表示された。