君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
15.聖夜の試練~後編~ -紀天-
メジャーデビュー一周年を祝うLIVE当日。
前日の間深夜遅くまでスタジオで練習を続けて、
そのまま尊夜の一族が経営しているマンションの自室へと帰った。
翌朝、窓から外を覗くと珍しく白銀の世界が広がっていた。
ふと携帯電話が着信をつげ、キャビネットの上に置いてあった電話を持ちあげて出る。
「紀天、起きとったか?」
「起きてたよ。っといっても起きたのは今だけどな。
そっちは?」
「まぁ、二時間くらいは仮眠できたかな」
「二時間ってそれは、寝たうちに入んねぇだろ。
声でなかったらどうするんだ?」
「その前にボイトレだけ集中して会場に行くよ。
オレ、今から出て社に寄って今日の指示だけ出してスタジオに行く」
「って、また単独かよ。
外、雪で真っ白だぞ」
「そうだねー。せいぜい、滑らないように気をつけるよ」
そのままアイツの電話は一方的に切れて、俺はもう少しマンションで準備をして
スタジオへと向かう。
スタジオ前には、託実と祈、そして隆雪の弟、雪貴が姿を見せてた。
「おはよう、憲」
「おはようございます。憲」
「憲さん、おはようございます」
出迎えてくれた三人に挨拶を返しながら、
スタジオからハードケースに詰め込んだ機材を、機材車に順番に詰め込んでいく。
俺たちを慕ってくれる後輩のローディーたちの手伝いもあって、
スムーズに積み込み作業を終えると、一足先に機材車はスタジオを発進した。
「十夜は直接会場に行く。
本社に顔出して、ボイトレして顔出すって連絡あった」
「大丈夫です。十夜からは朝一にメール貰ってます」
「あっ、僕のところにも届きました」
「んで、隆雪は?」
まだスタジオに姿を見せていないリーダーの名を紡ぐ。