君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】



「救急車、到着しました」
「はいっ、ストレッチャー通るよ」



そんな掛け声が飛び交う中、
ストレッチャーに乗せられた怜さんは目の前を通過していく。



「羚、後で待ってる」
「はいっ。こっちが片付き次第、そちらに向かいます」


そう言うと羚さんはお辞儀をして、救急車がサイレンを出して走り去るのを見送った。


「紀天、晃穂、来ていたのね」


そう言いながら姿を見せたのは、宝珠さまと高臣さん。


「チケットは取れなかったんだけど、怜さんがくれたから」


そう言うと、宝珠さまは悲しそうに目を伏せて
高臣さんに寄りかかる。

そんな宝珠さまを優しく抱きとめる高臣さん。



「晃穂、紀天、どうか今日のLIVEをずっと忘れずに覚えていてね」



宝珠様の告げたその一言が酷く気になりながらも、
私は頷いて、紀天を見つめた。


「晃穂さん、紀天さん、今日は来てくださって有難うございました。
 慌ただしくてすいません」

「こちらこそ、有難うございました。
 怜さんに、有難うございますと伝えてください」


羚さんと会話を終えると、SHADEの他のメンバーやスタッフさんにも
お礼を言って、私たちは会場を後にして、
アイツのマンションへと帰っていった。


帰った途端に、隣の建物のスタジオで
思いっきりドラムを叩き続けたアイツ。


心地よい疲労感が包む中、アイツの部屋に戻って
SHADEの余韻に浸りながら、興奮冷めやらぬままに
アイツと体を重ねた。


真夜中、アイツの携帯電話が鳴り響く。
眠そうなアイツが携帯電話を掴んで起き上がる。


アイツの電話から聞きもれる言葉。

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