君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
アイツと私の関係は……幼馴染から恋人に昇格しただけ。
私がどんなに思っても、
アイツは私の望みを知ろうとしない。
アイツが私を受け入れてくれるのは、
親同士が仲がいいから?
私が幼馴染で、危なっかしくて、ほっとけないから?
同情?
そんな風に思ってしまう私は、それだけで凄く惨めで……
そんな現実から蓋をするように、それを求めないようにする。
今まで通りで十分じゃない晃穂。
アンタの好きなアイツは、
今もアンタの傍に居てくれるでしょ。
だけどアイツは、アンタだけのアイツじゃない。
アイツは,尊夜のお兄さんで、Ansyalの憲で……
私以外にもアイツを待ってる存在は、沢山沢山居るんだよよ。
だけどアイツが今、こうやってアイツのマンションに呼び寄せて
一緒に生活してくれてるのは私なんだ。
私なんだ……。
アンタなんだよ、だから……それ以上、求めちゃダメだよ。
そう……アンタはアイツの陰になるって誓ったんだろ。
アイツの傍で、アイツを支えられるだけで十分幸せだって自覚しないと。
それ以上は高望みなんだよ。
自分を抑え込むように、何度も何度も言い聞かせつづけた。
その後は、与えられた派遣の仕事を集中してこなして
晩御飯の買い出しにスーパーへと向かう。
スーパーで買い物してる時、私の携帯が着信を告げた。
液晶に表示される名前は、尊夜。
滅多にならない電話番号が、二度目の表示を告げた。
買い物かごを持ちなおして、携帯電話を通話させて耳にあてる。