君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】



「別に今日は晃穂ちゃんを虐めたくて呼んだわけじゃない。
 オレは晃穂ちゃんの本音を知りたいって思ってさ。

 単刀直入に質問する。

 晃穂ちゃん、紀天のことどう思ってる?」


えっ?

尊夜君に突然切り出されて質問に、私はびっくりして
ゆっくりと尊夜君の視線を見つめる。


ここに来て、こんな質問されるとは思わなかった。



「アイツのことは好きだよ。
 好きだから傍に居たいとは思ってる」

「結婚は?
 そんな風に思ったことはないの?」



結婚……?


アイツと何時かは夫婦にって、思わなかったわけじゃないよ。

だけどアイツには、尊夜君が大切で……
自分よりも尊夜君が一番なのは知ってて、それを知ったうえで私は好きになってる。


尊夜君のせいだなんて口にしたくないし、言いたくも思いたくもない。


グルグルとそんなことを考えていると、それ以上は言葉にすることが出来なくて……。



「オレが原因かな?」



静かにそう言いながら、尊夜君は私の表情を覗き込んでニヤリと笑みを浮かべた。

言葉にしなくても……思ってたことが顔に出たかもしれない。
 



「オレは晃穂ちゃんと紀天はお似合いの二人だと思うよ。
 たまには、アンタが紀天を押し切るくらいの勢いがあってもいんじゃない?
 いつも受け身ばかりで待ってないでさ」

「だけど私はアイツの邪魔はしたくないから」

「邪魔って何?アンタの好きな紀天はそんな風に思う奴なのかな?
 アンタの存在が紀天のプラスになってるとは考えないの?」

「そんな風には思えないよ。

 私は今も昔も自分に自信がないから……。
 私って弱虫だから、小さい頃からアイツばっか追いかけてた。

アイツはね、私とは違ってアイツ自身で次から次へと眩しいほどに輝いていける。
 
 だから……私がアイツの足を引っ張っちゃいけないって……重荷になっちゃいけないって
 そう思うの。

 でも離れるなんて出来ないから……せめて、アイツの傍に居させてほしくて」




気が付いたら……尊夜君に零していた私の本音。

泣きたくないのに……絞り出すように伝えていたら、
涙まで零れてきちゃった。



「晃穂ちゃん泣かんでもええやん。
 ほらっ、涙ふきや……。

 あのバカ、女の子こんなにも泣かせて待たせて
 あかんやろ」



尊夜君はAnsyalの十夜君の口調で独りごとのように呟く。 



「アイツが結婚したいって晃穂ちゃんにプロポーズしたら、
 晃穂ちゃんはノーとは言わんな」



そう言って優しく微笑んだ尊夜君に、私は必死に涙をとめながら
にっこりと微笑んだ。

< 210 / 245 >

この作品をシェア

pagetop