君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
19.親の想い 踏み出す一歩 -紀天-
12月も終わりに近づいた年の瀬、
Ansyalのメジャーデビューの記念LIVEを終えた後、
俺は父さんから電話で呼び出された。
晃穂に理由を話してマンションを後にする。
その日アイツを連れて俺たちはそれぞれの実家へと帰った。
それぞれの実家といえど、近所同士の俺たちは
その日の夕飯も一緒に鍋を囲んで解散。
鍋の後片付けをする咲空良母さんを見ながら、
父さんが寛ぐソファーへと腰掛けた。
TVから聞こえるサスペンスドラマの音。
父さんは更にウィスキーを飲みながら、
ゆったりと夜のひと時を過ごしていた。
「紀天、ほらっ、久しぶりに睦樹さんと飲むのもいんじゃない」
そう言って、母さんは氷の入ったグラスを三つお盆に乗せてくる。
そしてテーブルの上に、三つグラスを置いた。
「睦樹さん、心【しずか】の分とフロートで頂ける?」
「喜んで。
紀天、お前は?」
「あっ、ハイボール」
「了解」
そう言うと父さんはそれぞれのリクエスト通りにウィスキーを
グラスに注いでいく。
父さんが作ってくれたものを、それぞれが手に取って乾杯。
テーブルに置かれたままの、心母さんのグラスにもグラスをあわせると
俺はハイボールを口をつけた。
久しぶりの家族水入らずの時間。
ここに尊夜が居たら全員、勢揃いなんだけどなー。
そんなことを思いながら、TVをボーっと見つめる。