君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
そこに居たのは車を運転していた制服姿の運転手。
そして神前悧羅学院の制服である、菫色の燕尾服をキリっと着こなして、
生徒総会メンバーの証である黒いシャツを着こなした二人。
「先ほど、こちらに辿りつきました。
廣瀬紀天です」
自己紹介がてら、お辞儀をして名前を名乗る。
「私は昂燿校のKINGを務めます紺野高臣【こんの たかおみ】。
こちらは昂燿校高等部総代の三杉竣祐【みすぎ しゅんすけ】」
引き続き挨拶を続けるのは、色白で真っ黒な艶やかな黒髪を左側で
やんわりと結んだ少年。
その隣には、同じやや長めの不揃いな茶髪を左側で結わえてメガネをかけた少年。
そのどちらもの髪を結わえているのは、紫色の組紐。
紺野高臣と三杉竣祐。
確か悧羅校で行われる学院合同祭でも何度も名前はみかけてる。
KINGとは三校の寮長のトップを担う生徒総会の役職の一つだ。
そんなことを思いながらオレは二人を見つめていた。
悧羅校にも有名なヤツはいる。
確か……デューティー光輝こと、
悧羅校高等部総代の三杉光輝【みすぎ こうき】)の双子の弟が今の竣祐総代だったよな。
そんなことを考えながら、突然の迎え人を見つめていた。
「廣瀬紀天。
悧羅校では兄、光輝をデューティーとしましたね」
そうやって言葉を続けるのは三杉竣祐総代。
デューティーとは神前悧羅学院の独自指導システム。
現理事長、綾音紫【あやね ゆかり】氏が学生時代に組み入れた、
HBW【ハウス ブレイン ワーク】制度の役割の名称の一つ。
デューティーは、指導する側。
ジュニアは、教えられる子供。
デューティにとっての、
デューティは、オレにとってのシニア・デューティー。
そしてそれぞれの縦割グループの中の代表が
グラン・デューティーと呼ばれていた。
「はいっ。
悧羅校では、光輝総代に大変お世話になりました」
「昂燿校で紀天のデューティーを務めるのは俺になりました。
兄弟揃って縁を頂きましたね。宜しく」
そう言って差し出された手をオレはゆっくりと握り返した。