君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
慌てて携帯電話を探って時計を見ると、
時間は朝の七時を回っていた。
「あっ、PV収録とレコーディング」
思い出した現実に慌てて体を起こすと、
微かに痛みの残る関節痛。
自分の現状が理解できないまま、そのままソファーに再度眠り込んだ。
「目が覚めたか?紀天」
ドアを開けて姿を見せたのは尊夜。
「お前さ、無理しすぎ」
「無理しすぎって、お前がカクテル進めたからだろ。
PVもレコーディングもどうすんだよ」
「どうするって、先にメンバーやスタッフ話し合って
日にちをずらしてる。
晃穂ちゃんからのたっての願いだからね。
お前が寝てないみたいで心配だってさ。
昨日も今日も、自主練習。
お前は寝るのが仕事な。
カクテル飲ましたの、お前が熱出てる自覚なさそうだったから。
ほらっ、テーブルに薬あるだろ。
飯食って、薬飲んでもう少し寝てろ」
そう言うと、尊夜はクリスタルホテルの紙袋から
何かを取り出してテーブルに並べた。
スプーンと一緒に置かれたのは、リゾット。
向かい側のソファーに座った尊夜と朝食にリゾットを食べて
そのまま袋から取り出した薬を処方箋通りに飲む。
「俺、このままここで作詞作業に入るから、
お前はもう少し寝てろよ。
ちなみに此処まで往診してくれたの、天李先輩な。
怜さんの主治医してた。
俺らのグラン、召喚しようにも裕先輩こっちに居なかったからさ」
とどめの様に、天李先輩の名前を出すと
アイツは小悪魔の微笑みを浮かべて、作業へと集中を始めた。
シャーペンで文字を書く音だけが部屋には静かに響く。
そのまま俺はもう一度、眼を閉じて眠りについた。
次に起きた時には昼をまわってて、朝怠かった体は
思った以上に軽く感じで、起き上がるとグーっと体を伸ばした。