君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
作詞作業を終えて、そのままテーブルに突っ伏して眠っている尊夜に
毛布を掛けると、そのまま部屋を後にしてスタジオへと顔を出す。
スタジオでは、
託実・祈・雪貴が三人で何かを相談しながら作業を続けていた。
「あっ、紀天さん」
「おぉ、紀天もう体はいいのか?」
「憲さん、体だけは大切ですから無理しないでくださいね」
温かく迎え入れてくれる雪貴・託実・祈。
「あらっ、紀天熱は下がったの?
もう無理しないのよ。
私、言ったわよ。晃穂を心配させるようなことは慎みなさいって。
Ansyalはアナタを追い詰める仲間ではないでしょ。
春のツアーも、新曲も、確かにファンたちは待ってると思うわよ。
だけどメンバーがあってのバンドなの。
メンバーがあってのツアーであり、新曲でしょ。
少しくらいスケジュールを動かしても、まわる時もあるの。
遠慮なく、弱音を吐いて頼りなさい。
このメンバーはそれが出来るメンバーでしょ」
そう言って最後に姿を見せた宝珠さんは、
俺に言いきると、輪の中央へと入っていく。
「紀天、十夜は?」
「今、眠ってる」
「了解。
そのまま眠らせて、他の作業を優先させましょう。
まず託実のベースからレコーディングしましょう。
託実、スタジオへ。
皆、準備を始めるわよ。
祈と雪貴はその後に順番に入って貰うから、その心づもりで。
紀天、貴方は明日レコーディング予定だから、今日はそのまま帰って
披露宴の準備を少しして、もう少し休みなさい。
晃穂も……あの子も多分、睡眠不足だと思うから
ちゃんと眠らせてあげなさい。
アナタならそれが出来るでしょう?紀天」
意味深な言葉を残したまま、
宝珠さんはコントロールルームへと入室した。