君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
会場内に流れるBGMは、メンバーがセレクトしたお気に入りの曲。
そんなBGMの後ろには、スタッフたちが楽器の音を出して準備に慌ただしい。
BGMがふぅーっと消えて、ステージが暗転すると、Ansyal結成当初から流れる
幻想的なovertureが空間を包み込む。
ファンたちの歓声が一気に会場内を広がって熱気に包まれる中、
光を浴びて、アイツは真っ先に姿を見せる。
憲コールが一斉にアイツに注ぐ中、
アイツはいつもの様にスティックを天に突き上げて一礼すると
相棒のドラムの方へと向かっていく。
メンバーが次々登場して、一曲目が始まる。
ファンが一斉に体を揺らし、腕を振り、ヘドバンを始めると
私も自然と体が動き始める。
三曲ほど歌った後、十夜の最初のMC。
その後、楽器隊のセッションから中半スタート。
セッションの後には、バラードが続いてそのまま後半突入。
Ansyalでファンと共に後半ラスト。
メンバーたちがステージから降りていくと、会場内からは一斉にアンコールが湧き上がる。
そんなファンたちと一緒に、私も久しぶりにアンコールの声を張り上げた。
アンコールを暫く続けると、再び紀天たちが姿を見せた。
そして、ステージを照らしていたライトの一つが壁側の私のもとに照らされた。
眩しさに目を閉じる。
「皆、アンコールありがとな。
今日はAnsyalの憲から、皆に報告がある。
憲が先日、そこにいる晃穂ちゃんと無事に入籍しました。
皆も晃穂ちゃんのことは知ってると思う。
俺ら、Ansyalの為にずっと陰になって支え続けてくれた
憲の最愛の奥さん。
ちょっと晃穂ちゃんステージあがっておいで。
皆、晃穂ちゃん通したってな」
十夜の無茶ぶりに、私は戸惑いながらこの場に居るファンたちに祝福されて
ステージへと挙げられた。
ステージに上がって真っ先に向かうのは、紀天の元。
『こんなの聞いてないから』
講義するようにアイツに視線を向けると、
アイツはドラムの前から移動して、私の隣へと来た。
「憲はオレらAnsyalにとっては、学校の先輩で兄貴みたいな存在で、
その隣に居る晃穂ちゃんも昔から、姉さんみたいなそんな存在でした。
此処に来るまでには長い道程があったけど、今年、ようやく二人は入籍しそれを
ファンの皆にこの場を借りて報告することが出来ました。
オレらはこの先も、人生の節目節目の出来事を皆にも報告していくから
皆も同じように祝福して、オレたちと一つになって欲しい。
そんな風に思ってる。
今日はそんな二人の為に、特別ゲスト。
憲と晃穂ちゃんが、デートでも良く行ってたバンド。
SHADE。そんなSHADEは、オレらがリスペクトし続けた怜さんが昨年の九月、武道間の後に旅立ちました。
そんな中、ドラムのEIJIさんがこの場に来てくれました」
十夜の言葉に隣の紀天は凄く嬉しそうで、私もびっくりしてステージ袖に視線を向ける。
ゆっくりと登場したEIJIさんは、十夜の隣に立って私たちに視線を向けた。