君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】

「んじゃ、行ってきます」

「あぁ、いっといで晃穂ちゃん」



近所のおばさんたちに見送られて、
制服を翻して駅へと向かう。


神前悧羅学院は、良家の子息・子女が多いので
自宅通学が可能になった人から車での送迎が多くなる。



ただスポーツ推薦入学の私には、
そんな夢みたいな生活があるわけもなくて、
街中を歩くにはある意味目立つ過ぎる菫色制服に身を包んで最寄駅へと急いだ。


時間見誤った……。



ゆとりを持って出たはずの時間なのに、
混雑し過ぎる朝ラッシュに乗りたかった電車に乗り込むことが出来ず次の電車に乗る。


その時点で、５分遅れ。


次にようやく乗り込んだ列車にも缶詰のように詰め込まれる人・人・人。



「はいっ、ドアしまります。
　押します」


なんて言う駅員さんの声と同時に、
奥へ奥へと詰め込まれる車内。


そんな繰り返しを各駅でこなして、
辿りつく悧羅校最寄駅。



もう電車を降りた頃には精根尽き果て気味。

綺麗に整えたはずのリボンはヘロヘロ。



下車間際。


強引に降りるための道を切り開いて、
降りたものだから髪も乱れ気味。



そのままお手洗いへと駆け込む。


洗面所の前、軽く髪の手入れと制服チェックを終えて１５分経過。


その後、学院の門にようやく到着。


ったく……アイツが居れば、
私が押しつぶされることもないと思ったのに。


待ち焦がれた高校生活なのに、
私の隣にずっといてくれると信じてた
アイツがいない現実が初日から圧し掛かる。




「ごきげんよう、晃穂」
「おはよ、晃穂」



セキュリティーチェックを超えた学院の門前で、
私を待っていてくれたのは初等部以来の親友、
響尾智海【おとお　さとみ】。

そして紀天の親友で智海の彼氏・宝生凌雅【ほうしょう　りょうが】。


「あれ？
　晃穂、お前紀天と別れたの？」


ストレートに切り込んでくる凌雅のデリカシーのカケラもない言葉に、
思わず一発拳を入れたくなった。


「もう凌雅、もう少し言いようがあるでしょうに。
　それで晃穂、紀天どうしたの？
　入学式に熱出したとか？

　ほっとけない性分の紀天だから、困ってる人に世話焼きして、
　一人遅刻してくるケース？」



なんて心配半分、面白半分で切り返してくる智海。