君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】

華京院宝珠さんは、良家のご息女。

生活スタイルも何も違いすぎて
戸惑い続ける私を何時も導いてくれた。



「晃穂、今日から高校生ですわね。
 入学おめでとう」


そう言って、手ずから制服に入学式のお祝いのコサージュをつけてくれる。
ボレロが華やかになる。


差し伸ばされた手をゆっくりと手に取ると、
宝珠さまは、ご自分の方にギュっと引き寄せた。

弾みで動いた足が門を潜る。



「これで晃穂も高校生ね。

 少し登校時間が遅くてよ。
 やはり私の家の車で迎えに行こうかしら?

 でなければ晃穂の紅茶が飲めなくてよ」


なんて宝珠さんは笑ってる。

宝珠さんが言うと冗談なのか本気なのかわかんない。

だけどそんな彼女のペースにはまっていくのは、
悪い気はしない。



「光輝さまから聞きましてよ。
 紀天、昂燿校に転入したそうですわね」


光輝さまは、三杉光輝【みすぎ こうき】。


この間まで、紀天のデューティーだった人で、
この悧羅校の高等部総代を務める。


ちなみに宝珠さまは副総代を務めてたりする。


理事長が任命する生徒総会メンバーだけあって、
宝珠さまの耳にはもう入ってるか。



「はいっ。
 急に言われちゃいました。
 
 昂燿に行くって」



思わず涙腺が緩みそうになるのを
グッとこらえて、鼻をすする。



「まぁ、晃穂……」


宝珠さまは手にしていたハンカチを私の方へと握らせた。



「紀天のデューティは光輝さまの弟・竣祐さまが受けもたれるそうよ。

 春休み、昂燿にいるフィアンセと話をしたから確実な情報よ」


そう言うと、宝珠さまは微笑んだ。


宝珠さまのフィアンセである、紺野高臣さまは
昂燿校でKINGを務められる存在。
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