君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
だから、宝珠さまがもたらせてくれる情報は確実なもの。
アイツなんて、あれ以来一度も連絡すらくれないのに。
電話の一本くらい寄越してくれたらいいのに。
そんなことを思いながら、宝珠さまの後に続くように一緒に歩く学校内。
視線が集中するのはいつもの事。
何せ、私のデューティは存在が目立つから。
そしてその目立つデューティのジュニアが、
異端児の私。
もう慣れてしまった光景ではあるけど、
居心地はいいとは思えない視線を感じながら
電光板の前へ。
そこに表示されているのはクラス表。
「さっ、私が案内するのはここまでね。
式が終わったら、お祝いしましょう。
校門前へ」
言われるままに頷くと、私は教室の方へと向かった。
担任と副担任の紹介。
そして教科担当講師の紹介。
ホールで行われる入学式。
アイツが居なくても時間は止まらない。
入学式の後、教科書を貰ってカリキュラムデーターを、
鞄に入れて持ち歩いているノートパソコンインストールする。
そして宝珠さまとの待ち合わせ場所、
校門前へ。
その後は、ケーキを食べに一緒に手掛けて
招かれるままに、華京院のお屋敷へ。
緊張のまま、宝珠さまの演奏するピアノを聴いて
ディナーまでご馳走になって、家へと送って貰った。
慌てて出てきたお母さんが宝珠さまに「つまらないものですが」っと手渡したのは、
近所の和菓子屋のおばちゃんの最中。
まっ、確かに美味しいけど……母さんよ、
宝珠さまに渡すものじゃないかも……。
なんて溜息をつきつつも、母はお礼も出来て満足そう。
水差すわけにはいかないか……。
「それでは、こちら頂いてまいりますわね。
お心遣い有難うございます。
ごきげんよう。
明日、6時にお迎えに上がります」
宝珠さまは、優雅にお辞儀をして……決定事項を伝えて
車に乗り込む。
流れるような所作に、気が付いた時には
その言葉に半弄することも出来ず、
車が走りだしてしまったことを知った。
入学式の翌日から、スポーツ推薦の私には
朝練も放課後の練習もない日はない。
かといって……6時にここまで迎えに来てくれるなんて、
やっぱり本気だったんだ。
今朝のあの発言。