君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】


高校生活初日、
ぐったりと項垂れながら帰宅。




お風呂に入って、いつもの体幹トレーニングをした後、
携帯を握りしめてベッドに転がる。



今日もアイツからの連絡は入らない。
もう10日も過ぎたんだ……。



思わず鳴らない着信に、握ってた携帯を投げたくなったけど
そこはグっとこらえて握りこぶしで枕に八つ当たり。




携帯は高いんだから、
早々、壊せない。





そのまま不貞腐れたように就寝。




明くる日、6時に玄関のチャイムがなる。
約束通り現れた宝珠さま。


その日から、車での登校が始まった。




広いリムジン。


車内で、求められるままに
紅茶を用意する私。


揺れる車内で紅茶をいれる私の手には、
零さないように美味しく入れようといろんなところに力が入ってる。



車に紅茶を零すわけには行かない。


慎重にいれろ、私。




何とか無事にいれた紅茶を本に視線を落としながら、
優雅に口元に運ぶ宝珠さま。



そんな傍ら、私も鞄から本を取り出してゆっくりと読書タイム。


校内まで車で入るとそこからは別行動。


宝珠さまは生徒総会。
私は朝練。


そして授業を受けて放課後の部活。



帰り道も、何故か校門の前には宝珠さまの姿。
そのまま車に乗り込んで自宅まで送って貰う。




そんな生活を繰り返しながら、
更に1週間。

4月に入って、すでに三週間が過ぎようとしていた。




アイツが居なくても時間は止まらない。


どれだけ昂燿のことが気になっても、
休みも返上で部活の私には、
行く時間もない。


行く時間があったとしても、
ただ「会いたい」って言うそれだけじゃ、
昂燿の門を潜るなんて出来ない。



紀天からの電話もメールも
まだ一度も届かない。

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