君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
「伊吹、紀天君はどうだ?」
伊吹の親父が息子に声をかける。
「デューティ紀天は非常に優秀な先輩です」
すかさず切り返す、可愛げのないジュニア。
ったく思ってもないことをサラサラと口にしやがって。
そんな可愛げのなさが可愛くて
思わず髪の毛をくしゃくしゃと撫でまわす。
思わぬ行動に戸惑ったのかフリーズして、
ただオレを睨みつける伊吹。
「結構、結構。
伊吹、お祖母さまがたまには顔を出せとぼやいていたよ。
昂燿とはいえ、届出を出しての帰省は受理されるだろう。
良かったら君も付き添ってやってくれないか?」
はっ?
誰が何処に付き添えって?
このおっさん、親父の親友らしいけど何言ってんだよ。
そう思いながら親父の友達を見据える。
「お父さん、デューティをプライベートに巻き込まないでください。
あのっ……おっ、弟とお母さんはいかがお過ごしですか?」
「伊吹は気にしなくていいんだよ。
志穏とお母さんのことは、お父さんの役割だからね」
そんな会話からコイツの家庭事情も
何となく複雑なのが、ニュアンスで伝わってくる。
こいつは伊吹。
あの葉書にはもう一人、志穏って奴が映ってた。
オレの弟である尊夜は、
こいつがさっき言った弟の志穏って奴の方なのか?
尊夜の手掛かりは、
あの葉書に書かれてた瑠璃垣の文字。
オレのジュニアは、確かに……
あの葉書にかかれていた名前と同じなんだ。
手掛かりは少しずつ尊夜に近づいてきてると思うのに。
「紀天、伊吹くんと仲良くしろよ。
咲空良が逢えるのを楽しみにしてるよ。
それに……晃穂ちゃんも。
一度くらい顔を見せてやれ。
ここでは、逢えるだろう?
彼女を寂しがらせるものじゃないぞ」
親父はそんなことを言いながら、
伊吹の親父とオレたちの前の方へ移動しようとしていた。