君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
11.週末のデート~高校時代~ -晃穂-
電話の後、週末が来るのが楽しみだった。
待ち遠しくてバカみたいにはしゃいでた。
アイツと逢えるって思っただけで、
昨日まであんなにも重かった体が今は、
信じられないくらい軽くて。
水泳部の朝練も、放課後の練習も軽くて、
何処までも早く泳げそう気がした。
実際、タイムもここ一週間の中では一番最速だった。
まだ自己ベストの更新まではいかないけど、
久しぶりに自分でも納得できるタイム。
人の心って単純だなーなんて思いながら
迎えた約束の日。
その日、放課後練習を終えて校門まで歩いて出掛けると、
見慣れた燕尾服に身を包んだアイツ。
嘘っ……学校まで来てるなんて。
「オッス。
こっちに用事あって来たから、
お前が出てくんの待ってた。
どうせ、帰る方向一緒だろ」
嬉しい気持ちと複雑に絡み合う、
素直に慣れない私の心。
「まっ、いっかぁー。
今日は用事も入ってないから、
紀天に付き合ってやるよ」
抱き寄せられて
すっぽりとはまったアイツの胸の中。
えっ、何?
「バっ、バカっ。
何してんのよ。
ほらっ、電車乗り遅れたら大変なんだから
行くわよ」
照れ隠しで突き放すように先に行く私を
アイツは、後ろから追いかけて来てくれた。
「明日、一日出掛けるか」
電車の中、そう言ったアイツの声。
「いいよ。明日は予定入ってないから」
「んじゃ、決まり」
電車の中でも、他愛のない会話を繰り広げて
あんなにも擦れ違ってたなんて嘘みたいで。
ずっと憧れ続けた、アイツとの通学時間を満喫して、
心弾んでる私も居て。
その日、一緒に家の前で帰ると紀天は私の家の玄関前まで送り届けて、
自分の家へと帰って行った。
二階に続く階段をのぼりながら、
アイツの部屋の電気が付いたのを確認して
心が嬉しくなってる私が居る。
明日はアイツとデートなんだ。
ずっと憧れてたアイツとの高校生活がようやく少しだけ出来るんだ。