君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
「すいません、案内してきます。
離れます」
そう言って、他のスタッフに声をかけた後は、
その人はオレと晃穂に「ご案内いたします」と
丁寧に告げて、建物の中へと誘導していった。
「どうぞこちらです。
こちら、Ryoさんのゲストです」
そうやって案内しながら、スタッフに告げると、
スタッフもゆっくりと会釈した。
「どうぞ、ドリンクチケットです。
奥のバーカウンターで、
お好きなものと交換してください」
そうやって握らされた、
ドリンクチケットと書かれたモノ。
一歩踏み込んだ場所は、思ったほど広すぎる箱ではなかったけど
それでも中央ステージを映し出すモニターは3つ。
緩やかに三段の高さが付けられた
会場内のフロアー。
各段の最善には、柵が設置されていた。
「どうぞ、Ryoさんのところに案内します」
わけわかんないままに、スタッフに誘導されて連れて行かれたのは
俗にいう、楽屋と言われる関係者専用の空間。
「失礼します。
Ryoさん、お客さんです」
なんて中の人に声をかけて、仕事に戻っていくスタッフさん。
お客さんも何も、オレからしてみては、
今からあう、Ryoさんって言う人物も全くわからない。
「どうぞ、本番前で慌ただしいけど」
そう言いながら、オレと晃穂を招き入れてくれたRyoさんらしき人。
その楽屋の中に居る、とある姿を見つけて隣の晃穂がほっとしたような
声を上げた。
「宝珠さま」
晃穂の声に、この中で唯一知っている
その人が、オレたちの方へと近づいてきた。
「まぁ、晃穂。
Ryoの紹介って事だったら、さしあたっては、
和泉智早【いずみ ちはや】辺りの差しがねかしら?
ねぇ、紀天」
全く持ってその通りの為、言い返す言葉もない。
宝珠さんに促されるままに中に入っていくと、
楽屋の中では、すでにステージ衣装に着替えたメンバーらしき人が
それぞれの時間を過ごしているみたいだった。
スティックを持って、机にパットを置いて叩いている人。
楽器をひたすら、椅子に座って磨いている少年。
かと言えば、誰かと電話してるのか、調べ物をしてるのか
携帯を触りながら、時間を過ごしてる奴。