君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
いつもの場所。
最前列の下手側の壁際に、
幼馴染のアイツ・晃穂は立ちながらオレの居る方に視線を向ける。
わざと下手経由でリアクションをして愛器の前へと移動した。
ドラム前の椅子に座り最初の曲の演奏に何時でも入れるように、
僅かな距離感の微調整を手早くしていく。
そうやっている間もAnsyalのメンバーは、
次々と光の中へと上がってくる。
メンバー全員がステージに揃ったところで、
再度、ドラムの椅子から立ち上がって、
その場で胸元で手を組んでゆっくりと祈りを捧げる。
天【そら】に捧げる大切な時間。
祈りの後、素早く椅子に座って一発目の音を力強く出す。
相棒Ludwigの太くて重厚な音色がステージに響き渡る。
それを支えるように強烈な地雷を鳴り響かせる託実のGibson Thunderbird。
柔らかさの中に鋭利さを含んだ祈のSadowsky。
隆雪の相棒だったZEMAITISをアイツ以上に操る雪貴。
4つの音色が重なり合ったとき、
中央に佇む、十夜が艶やかな伸びのある声を発した。
途中、3回それぞれにステージをはけて、
それぞれのパートのソロを演奏してファンから求められる、
アンコールの声をいっぱい浴びながら突き進んでいく3時間半。
楽しい時間は過ぎていく。
LIVEの後、当選したファン限定の撮影会が始まる頃には、
何時ものように会場内からは晃穂の姿は消えていた。
オレが晃穂をこの空間で見つけられるのは、
最初のovertureのみ。