君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
「別に、あれは時計が止まってたの。
そっそう壊れてたのよ。
明日はそんなことないもの」
咄嗟の言い訳が可愛くて、
思わず吹き出しそうになる。
お前、どれだけ時計壊してんだよ。
想像の中のアイツが寝ぼけながら時計を掴んで、
壁にぶん投げてる映像を思い浮かべてまた吹き出しそうになる。
まっ、アイツならやりそうか。
怪獣の着ぐるみを着たアイツが時計を足で踏んづけたり、
ボーっと火をふいて燃やしてるのを想像しちまった。
「ちょっと、紀天。
何、笑ってんのよ?
よからぬこと考えてないでしょうね」
グサっ。
そう言う突っ込みだけは鋭いからな。
「何でもねぇよ。
こっちの話。
んじゃ、明日な」
そうやって電話を切って潜り込んだベッドの中。
アイツとのデートが楽しみなのかSHADEのLIVEが楽しみなのか、
興奮してよく眠れぬままに朝を迎えた。
朝、朝食だけ食べ終えて鞄を持つと、
昂燿の学園都市を後にする。
バス、電車と乗り継いで向かう待ち合わせ場所。
大荷物の鞄を駅前のロッカーに預けて、
身軽になると晃穂との待ち合わせ場所へと向かう。
駅前の噴水広場。
そこには想像通り、晃穂の姿はまだない。
噴水に腰掛けながら、時折吹き出す水飛沫を体に感じる。
水が舞い上がる時だけ涼を運んでくれるものの、
外は太陽がギラギラと輝き続け汗が肌を伝っていく。
ふと、震えた携帯バイブ。
電話に出たものの、電話はすでに切れた後。
電話番号は通知しているものの俺が知らない電話番号。
折り返し、電話をかけても留守番電話に繋がるだけで、
相手とは連絡すらつかない。
もう一度、謎の電話番号に発信しようとボタンを押しかけた時、
竣祐さんの電話番号が表示された。
「はい、廣瀬です」
「紀天、突然の電話で申し訳ない。
今、俺の家に瑠璃垣伊吹の死亡ニュースが飛び込んできた」
突然の竣祐さんの言葉に、
オレ自身は途端に体が動かなくなって血の気が引いていく。
「紀天?
真実は俺にもわからない。
伊吹と連絡は?」
問われてすぐに、思いついたのは連絡がつかない謎の電話番号。
「オレ、親父に連絡とって瑠璃垣に向かいます。
オレの親父、アイツの伊吹の親父さんと親友らしいんで。
何かわかったら竣祐さんに連絡いれます」
そのままオレは噴水の前から離れて親父の携帯に連絡する。
オレの連絡に、親父は『わかった』と頷いて待ち合わせ場所を確認しあった。