君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】

「有難う。
 紀天、私と妹の昔話を聞いてちょうだい。

 
 昔、私と葵桜秋は、怜皇さんをめぐって恋に落ちたの。
 玲皇さんはお祖父様【おじいさま】の交わした遺言による私の婚約者。

 だけど当時の私は、恋に前向きに慣れなくていつも自分に自信がなくて。

 何かあると輝いて見えた、妹の葵桜秋にすべて任せてた。
 私たちは一卵性の双子で、そっくりだったから。

 そうやって怜皇さんを騙してるうちに、神様が罰を与えたの。

 妹の……葵桜秋のお腹に、怜皇さんの赤ちゃんが宿った。
 世間体を気にして、その日から妹は咲空良になって私は葵桜秋になった。

 妹が結婚した後に、私の妊娠してることがわかった。
 それが尊夜。

 全てを知って紀天と睦樹さん、そして心【しずか】は私を家族に迎え入れてくれた。

 生まれてくる尊夜と一緒に、5人で新しい家族になろうって。

 だけど生まれてすぐに、病院から尊夜は居なくなった。

 出生届だけは役所に届け出ることは出来たけど、
 その日から一度もあったことはない。

 妹とも……葵桜秋とも、その日からあっていない。
 そして怜皇さんとも。

 退院して1ヶ月ほどして、怜皇さんの名前で私と睦樹さん宛に、二人の赤ちゃんの写真が届いたの。
 その裏に書かれていた名前が、瑠璃垣伊吹と瑠璃垣志穏。

 今も尊夜は見つからない」



車内で告げられた真実の秘め事にオレは言葉を失った。


泣きながら涙に声を詰まらせて告げた咲空良さんを、
親父はゆっくりと運転席から手を伸ばして慰める。



聞かされた真実は、オレだけの問題じゃない。




今、オレが知りたいのは……アイツ。


オレの知る、瑠璃垣伊吹がこの全てを
知っているのかどうかってこと?
< 89 / 245 >

この作品をシェア

pagetop