君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
今すぐにでもステージから飛び降りて、
アイツを抱きしめたい衝動に駆られるのに、
Ansyalとしてのオレのポジションはそれを許すものではない。
彼女を追い求めながら最後までステージを終えて、
撮影会が終わる頃には体力自慢のオレも流石にくたびれる時間だった。
全ての予定を終えた後は、
機材を車に積み込んでLIVEハウスを後にする。
出待ちするファンたちが屯う前をすり抜けるように車に乗り込む。
走り出した車の窓越しに、
会場周辺をゴミ袋を持ってゴミ拾いを何人かとしてくれているアイツの姿を見つけた。
あの場所に行くことも、
車を止めることも出来ない。
ポケットに突っ込んだ携帯を取り出して手早くメールを打ち込む。
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To:絹谷晃穂
晃穂、いつもありがとな。
オレら今から離れる。
今日は嬉しかった。
ツアー終わったら、地下作業の前に少し休みが取れるはずだから。
そしたらお前んちに行くよ。
だから好物食わせてくれ。
晃穂特製の秘蔵ダレのステーキ丼。
楽しみにしてる。
紀天
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