君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
「何番ですか?」
スタッフの人に声をかけられて、思わずチケットを見せる。
「あぁ、37番だったらもう中に入れますよ。
どうぞ」
「あっ、まだ待ち合わせしてる友達が来てなくて」
「そうですか。
だったら、ここから出ないように歩道を使う人の邪魔にならないように
もう少し端に寄って待っててくださいね。
はい、次300番~350番までの人、中に入ってください」
チケットを見つめながら、
柵にもたれて立ち尽くす会場前。
気が付いた時には、あれだけ並んでたファンの人たちが
全て建物の中に入った後だった。
「君、まだ友達来ないの?
今日は定刻通りだから後、三分でLIVE始まるよ」
スタッフさんは、そう言うと外回りを片づけて建物の中に入っていった。
建物の中から、時折歓声が漏れてくる。
微かに聞こえてくるサウンドを聞きながら、
今も姿を見せないアイツのことを思う。
何で来ないのよ、バカ。
外はまだ暑いはずなのに、
私の体は冷たくなって血の気が引いていくのを感じる。
何時の間にか、雷鳴が轟き始め激しい雨が降り始めた。
それでも私は、
その場所から動くことが出来なかった。
破られた約束は、
今も私を強く追い詰めていく。
アイツに約束を破られた。
それが今は悲しすぎて……。