君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】






突然告げられた秘密。

アイツは何時からその秘密を抱えていたんだろう。



咲空良さんから歪められたその関係の歪みは、
今まだ修正されることなく再び新たな歪みを作って広がっていく。



全ての人間がその家族の秘密を知ったからと言って
簡単に修正できるものではないものだって
オレ自身も何となくわかってる。



だけどそれを認めると言うことは、
廣瀬尊夜もまた、もう存在しなくなると言うこと。



廣瀬家で……家族揃って過ごすことなど、
もう二度と叶うことのない夢。



歪められた運命を自ら受け入れて、
瑠璃垣の荒波にもまれて生きていくことを
決めたアイツが、オレの弟として公に生きていくことはもうない。



そしてアイツ自身の本来の名前である志穏。



その名に戻ることも……その名で呼ばれることも。






参列者が帰った広いホール。




そのホールから自宅に戻ったアイツは、
志穏として荼毘に付された瑠璃垣伊吹の遺骨が入った骨壺を見つめながら
その場に座り込んだ。







伊吹さんの遺骨の入った骨壺。

そしてアイツと俺。



それ以上は入ってこれないように内側から鍵をかける扉。






「ほらっ、泣けよ。

 この部屋には誰も入れない。
 鍵かけてるからな。

 オレも邪魔なら出て行ってやる」



出て行くつもりなんてないけどそうやって言い放つ、
オレ自身の心は内心、この部屋から追い出されないかビクビクしてる。




「勝手にすれば」



小さく呟かれた返事を受け止めて、
俺は肩を震わせるアイツを抱き寄せた。





「今だけだよ。
 伊吹さんの代わりな。

 しっかり泣いたら、明日からはしっかりとまた生きろ。

 お前が決めた人生選択。

 一度自分で決めたレールは、もう途中で降りることは出来ない」




この先もコイツは何度も自分が苦しむことを知りながら
どうしてこんな険しい道を歩こうとするんだろう。


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