無音。【完】
また、しばらくして
今度は
危篤状態だったお祖父ちゃんが
亡くなった。
歳だったから仕方ないけれど…
私はまた、聞こえる音が減った。
とうとう
自分の声も聞こえなくなった。
誰かが死ぬ度、
私の音は消えていった。
日に日に聞こえなくなる音。
唯一残っている、
ヘッドホンから流れるこの曲を
耳にしながら街を彷徨う。
沈黙の人混みに紛れ、
私は歩く、歩く。
そしてついに、
この曲さえも、
聞こえなくなった――。
鈍い衝撃、浮かぶ体。
音のない私に
「サヨウナラ。」
その声だけが、
私の世界に響き渡った。
end.