一歩【完】
あの頃、
よく二人で飲みに行った店。
あの頃、
よく二人で泊まったホテル。
あの頃、
二人で愛し合ってた日々――。
「よかった、来てくれて」
あなたの柔らかい笑顔一つで、
どうしてこんなにも
懐かしく思いだすんだろう――?
「な、なに…笑ってるんですか」
「あ…すまない…。
こんな時にでも、
君はキレイなままだから」
ド ク ン 。
やめて、苦しい。苦しい。
「……は、話って?」
「あ、…いや、謝りたくて…
僕は優柔不断な男だから、
君に甘えていた…すまない。
でも、君の幸せな姿を見て、
安心した…救われたよ。
君を愛して、よかった…。」
ド ク ン 。