さよならの魔法
目覚まし時計が、けたたましい音を出して朝を知らせる。
乱暴にボタンを押して、アラーム音を消す俺。
明かりを消して真っ暗だったはずの部屋の中が
、光に包まれていく。
眩しくて、目を背けてしまいそうなほどの光に。
本当は、もうとっくに目なんか覚めてた。
そもそも、あまり眠ることが出来なかったのだ。
ずっと考えてた。
ずっとずっと、考えてた。
自分のこと。
茜のこと。
これからのこと。
このままでいいのか。
こんなくすぶった気持ちのまま、茜と付き合っていていいのかと。
茜は、俺を愛してくれる。
もったいないくらいの愛で、俺を包んでくれる。
考え方の違いを埋められず、避けているのは俺の方。
違和感を感じているのは、俺だけなんだ。
考えてた。
ずっとずっと考えてたら、考え過ぎて眠れなくなってしまった。
俺らしくなくて、笑える。
(悪いのは、俺だ。)
辿り着いた結論。
どれだけ長い時間考えても、何度となく思い直しても、結論は変わらなかった。
変えられなかった。
茜と付き合い始めたのは、茜からの告白がきっかけだった。
あの日。
あの時。
茜が想いを伝えてくれなかったら、俺と茜は付き合い始めることはなかっただろう。
茜は、1年の時から俺のことを好きでいてくれた。
俺のことだけを見ていてくれた。
別のクラスだったのに。
接点なんて、まるでなかったのに。
だけど、俺は。
付き合い始める前までは、女友達だった。
たくさんいる友達のうちの1人だった。
仲のいい、クラスメイト。
ただ、それだけ。
よくよく考えたら、俺は茜のことを何も知らなかった。
何も知らないで、茜と付き合うことを簡単に決めてしまった。
どんな物が好きなのか。
どんな性格なのか。
どんな考えを持っているのか。