さよならの魔法
気になる。
けど、茜が思っている様な意味じゃない。
そんな俺の気持ちを知らない茜は、声高にこう叫んだ。
「返してよ、そのチョコ!」
「あか、ね………?」
「ユウキには、天宮さんの作ったチョコなんて必要ないじゃない!!そうでしょ………?」
茜の言葉に、目を見開く。
(必要ない………。)
確かに、そうだ。
どうしても必要かと聞かれれば、そうではないだろう。
このチョコレートがなかったら死ぬのかと聞かれれば、死なないと自信を持って答える。
この箱がなくても、俺は今まで通りに生きていけるだろう。
でも、そうじゃない。
他人からのプレゼントって、そういうものじゃない。
必要か。
そうではないか。
その狭い物差しで決めていいものなのだろうか。
俺は違うと思う。
そういうことではないと思った。
贈る人の気持ちが、プレゼントには込められている。
その人のことを思って、考えて、そのプレゼントを選ぶなり、作ったりしたはずだ。
例え、そのプレゼントが必要のない物だったとしても。
そのプレゼントに込めた気持ちまで、否定してもいいのだろうか。
ましてや、プレゼントをもらった本人でもない茜が、否定していいのだろうか。
いいはずがない。
この箱に込めた気持ちを踏みにじる権利なんて、誰にもないはずだ。
茜にも。
俺にも。
断ることはあったとしても、この箱に込めた気持ちまで否定する気は俺にはない。
だけど、茜には、そんなことは関係ないということか。
容易く、茜は天宮の気持ちを踏みにじった。
「ユウキには、私がいるじゃない!ユウキの彼女は………私なんだよ?」
「そうだけど………。」
そう。
俺の彼女は、茜。
自慢の彼女。
だけど、俺とは合わない彼女。
考え方が、まるで違う彼女。
「だったら、そのチョコはいらないでしょ?天宮さんからのチョコなんて、受け取らないでよ………。」