さよならの魔法
友達って、何?
友情って、何なの?
私が信じていたものは、何だったのだろう。
「友達なら、………だったら、1人だけ逃げるなんて………許さない。」
体が引きずられていく。
守られていた籠の中から、無理矢理に連れ出されていく。
私を守るものは、もうない。
かばってくれる人も、今はいない。
痛むのは、引っ張られている腕か。
それとも、心なのか。
答えるなら、それはきっと両方。
どっちも痛いんだ。
いつも、近くにいてくれて。
励ましてくれて。
笑い合って、喜んで。
時には叱ってくれ、時には一緒に涙を流してくれる。
そういう関係が、友達なのだと思っていた。
同じ感情を共有出来る関係こそが、友達というものだと信じて疑わなかった。
私は。
どこから、別の道を歩いていたのだろうか。
どこで、すれ違ってしまったのだろうか。
私は、橋野さんの気持ちを理解していたのかな?
同じ気持ちを、共有出来ていたのかな?
分かっていたはずの彼女の気持ちが、今は分からない。
友達であるはずの彼女の心が見えない。
それは、雲がかかった空の様で。
厚い雲に隠された、黒い闇の様で。
見えないその心を知りたくて、私はもがいていた。
「やめ………、止めて!!お願い………だから、もうこんなこと………止めてよ!」
心の底からの叫びに、ほんの一瞬、橋野さんの力が緩む。
普段は大きな声を出さない私が出したその声に、橋野さんも驚いたのだろう。
その隙を狙って、橋野さんの手を振り払う。
パシン。
軽い音を立てて、振り解いた手。
目を見開いた、橋野さん。
橋野さんの目の色が、即座に怒りの色に染まっていく。
そんな顔をさせてしまうほど、私は彼女のことを苛立たせていた。
追い詰めていた。
嫌われてしまうほど、彼女の感情を揺さぶっていたのだ。