さよならの魔法
催し物を1から考えて、全てを自分達の手だけで作り上げていく。
企画。
大がかりなセットを作るのも、自分達。
材料を集めるのだって、先生は手伝ってはくれない。
全ての行程に関わるからこそ、そこに感動が生まれるのだ。
他人任せにしていたら、この学校祭という行事がいくら楽しいものだったとしても、何の感動も生まれないだろう。
自分の手が入るからこそ、感慨深い行事となる。
忘れられない思い出になる。
今年のうちのクラス。
3年1組の出し物は、たこ焼き屋とお好み焼き屋だ。
火を使わないし、安全面での心配もない。
材料さえ準備しておけば、それほど凝った飾り付けや大がかりなセットもいらないからという理由で、うちのクラスの出し物は簡単に決まった。
学校祭は楽しみたいとは言っても、俺達の身分は受験生。
学校祭だけの為に割く時間は、そう多くは取れない。
他のクラスなんて、うちのクラスよりも手抜きしてるクラスもあるくらい。
展示物だけ並べて、何もしないクラスだってあるのだ。
大きなホットプレートと、たこ焼き用のプレートを取り付けたもう1つのプレートが、俺達の商売道具。
朝早くに登校して、材料の下ごしらえを済ませれば、すぐに開店出来る。
店番担当と、裏で材料の準備をする担当と。
時間毎に組まれたシフトの通りに、みんながそれぞれ動いていく。
店番担当の俺は、空を眺めていた。
ぼんやりと、去年の学校祭の日のことを思い出しながら。
(去年って、何、やってたんだっけ?)
あー、そうだ。
お化け屋敷だ。
教室内を暗幕で囲って、大がかりなセットを組んで。
狭い教室を迷路みたいに改造して、みんなでお化け屋敷を作った。
懐かしい。
ほんと、懐かしい。
たかだか1年前のことなのに、やけに懐かしさを感じてしまうのは何故だろう。
たった、1年前のことなのに。
1年前。
去年の今頃は、まだ茜と付き合っていた。