さよならの魔法
今日という日の為に、努力してきた。
最初は反発してた。
やる気もなかった。
だけど、俺も悟ったから。
これは、誰しもが通る道。
必要なことなんだって。
未来の俺に繋がる為に通らなければならない、試練なのだと。
カチカチ。
カチカチカチ。
時計の針が刻む音。
シャーペンの芯を繰り出す音。
紙の上を、細い鉛の線が滑っていく。
やれるだけのことはやった。
100%の力ではなかったかもしれないけれど、出せる力は全て出したつもりだ。
合格ラインに達したかどうかは、正直に言うと自信がなかった。
結果が出るのは、卒業式の後だ。
どこか怯えながら、その日を待つ。
残りわずかになった授業を受けていれば、自然と卒業式までのカウントダウンが始まっていく。
「紺野も、もう卒業か。早いなー。」
「そうですね、先生。あんまり、まだ実感ないですけど。」
「寂しくなるわ、お前がいなくなると………。」
「あーあ、もうすぐ、紺野ともお別れだな。」
あまり会えなくなるのは、事実。
それを考えると、俺だって寂しく感じる。
だけど。
「同じ町に住んでるんだし、いつでも会えるじゃん!それに、卒業式はまだ先だろ?」
思えば、いろいろなことがあった。
いろいろな経験をした。
たくさん笑って。
たくさん悩んで。
壁にぶつかって。
それを乗り越えて、俺は今、ここにいるんだ。
この学校に入学してきた時よりは、大人になれたのだろうか。
少しでも、人間として成長したのだろうか。
卒業は、通過点でしかない。
卒業式の先にも、未来は繋がっているのだ。
そして、その日。
みんなと別れを告げる日。
俺は、体育館の中でその時を待っていた。