さよならの魔法
矢田の番号は、合格者発表の中でも最後の方に載っていた。
補欠合格者。
その欄に載せられた自分の番号を指差し、矢田が大はしゃぎしてる。
「紺野、見ろって!俺の番号、あそこに載ってる!!」
「ああ、ほんとだ………。やったな、矢田!」
「よっしゃー!!これで、俺も合格だぜ。補欠でも何でも、合格してりゃいいよな!?」
何と言うか、矢田らしいその考え方に、思わず笑みが漏れる。
確かに、矢田の言う通りだ。
普通に合格しても、補欠で合格しても、入学してしまえば、同じスタートラインに立つことになる。
そこから先は、自分の頑張り次第で変わっていくのだ。
入学してからも努力し続けなければ、あっという間に落ちていく。
入試だけで、全てが決まる訳じゃない。
俺は普通に受かったけれど、これから先もこの位置をキープし続けられるかどうかは、俺自身の努力にかかっているのだ。
何もせずに遊んでいれば、1年も経たずにクラスでも下の方になってしまう。
ここから始まる。
この場所から、俺の高校生活が始まるんだ。
「おめでとう、矢田。」
「お前もな、紺野。」
何の因果か、再び矢田と同じ学校に通うことになってしまったけれど。
それはそれで、楽しいのかもしれない。
勉強だけで高校生活を終えるのは、本望じゃない。
それだけじゃ、つまらない。
矢田がいれば、笑える高校生活になりそうな気がする。
「紺野ー、母校に結果報告に行くぞー!」
「了解、っいうか、自慢したいんだろ。」
「当たり前だろー!ここまで頑張ってきたんだから、ちょっとくらい自慢したいし。」
「はははっ、お前らしいわ!」
「ほーら、紺野、行くぞ。」
最高潮のテンションのまま、俺は矢田の誘いに乗り、母校に合格の報告に行くことにした。
電車に乗って、生まれ育った町へと帰っていく。
車窓を流れる景色が、だんだんと見慣れたものへと変わっていく。