さよならの魔法
「え?秘密………?」
私が驚く様な秘密。
千夏ちゃんにまつわる、秘密。
今日初めて会ったばかりの私に、そんなことが分かる訳がない。
首を傾げる私を見て、千夏ちゃんが楽しそうに笑った。
「双子なんだよね、私。」
「ふ、たご………!?」
「そう、双子。もう1人、同じ顔してる人間がこの世にいるの!」
千夏ちゃんの突然のカミングアウトに驚く暇もなく、千夏ちゃんの真後ろから、そっくり同じ顔をした女の子が飛び出してきて。
そっくりだ。
本当に、瓜二つ。
千夏ちゃんと同じ顔の女の子が、ニコニコと同じ笑顔を浮かべて挨拶をしてくれた。
「初めましてー!」
「あ、は、初めまして………。」
「ちーなーつー、何、もう友達出来ちゃってんの?」
「うるさい、千佳。羨ましいんでしょー?」
「早過ぎだからー!!しかも、こんな可愛い子、捕まえちゃって。」
言葉を挟む隙もない。
息がピッタリ合ったその様は、夫婦漫才でも見ているみたいな気分にさせられる。
血の繋がりのせいなのだろうか。
それとも、それを抜きにしても、この2人の波長が合っているからなのだろうか。
双子の片割れの女の子が、私に自己紹介をしてくれる。
「私、千夏の双子の姉の、水野 千佳[ミズノ チカ]でーす。名前、教えて?」
「あ、天宮………春奈です!」
「うわー、可愛い名前!」
ああ、やっぱり双子だ。
この2人、ほんとに双子なんだ。
同じ言葉を使って、同じ反応してる。
双子は兄弟よりも感覚が近いとはよく言われるけれど、本当にそういうものなのかもしれない。
親と子と言えども、似ていない親子もいる。
そう、私と私の母親の様に。
私に兄弟はいないけれど、心を通わせられる間柄になれたかどうかは分からない。
親子よりも、兄弟よりも、深い絆がこの2人の間には存在しているのだ。
きっと。