さよならの魔法



あんなに仲が良かった2人が、別れという選択肢を選ぶだなんて。

いつもくっ付いていた矢田と林田が、離れてしまうなんて。


どんなに仲が良さそうに見えても、本人同士にしか分からない問題を抱えているものなのかもしれない。



小さな種が、大きなわだかまりとなることもある。

ほんの少しの距離が、埋められない大きな距離となることもある。


人間って、難しい生き物だ。

特に、男と女は、ややこしいなって思う。



一方通行では、上手くいかない。

片方だけが重くては、吊り合わない。


天秤の様なもの。



矢田と林田は、俺と茜を繋ぐ線だった。

茜と別れてからも、林田と付き合っている矢田を通して、茜のことを聞かされていたから。


茜と林田は、友達だ。

林田と矢田が付き合っている限り、俺と茜を繋ぐ線も消えない。


別々の高校に進学してからも、矢田から茜のことを伝え聞いていた。



矢田と林田との別れは、俺と茜を繋ぐ線の消滅をも意味するもの。

細く繋がっていた線が、ようやくその役目を終えた。


俺は、これで良かったのだと、そう思っている。



気持ちは、既にとうの昔に離れてしまっている。


俺と茜は、昔の様には戻れない。

お互いを好きだった頃には帰れない。


茜の気持ちが俺に向いているのなら、尚更これで良かったのだ。

繋がりが消えた方が、茜の為になるのだと。










毎日、電車に乗って。

学校へ行って。


教科書と睨めっこして、机にかじり付く。



進学校だから、勉強に付いていくことだけで精一杯だ。


怠けてなんていられない。

そんなことをしていたら、あっという間に置いていかれる。



勉強だけでも手一杯だったけれど、一応、部活にも入った。

文武両道だとか何とかで、部活に入れとも言われていたことだし。


選んだ部活は、弓道部。

中学時代と同じ部だ。




< 320 / 499 >

この作品をシェア

pagetop