さよならの魔法
『ハガキ』
side・ハル







青春は、ものすごいスピードで駆け抜けていく。


寝る時間がもったいないほど。

無駄な時間なんて、1秒もないほど。



大好きだった絵の勉強を、本格的に始めた。


自己流で描くのもそれはそれで自由でいいけれど、1度ちゃんと習ってみたいと思っていたから。

それに、私にも夢が出来た。

何も持たない私にも、私なりの夢が出来たのだ。



絵に携わる仕事がしたい。

大好き絵に関わる仕事がしたいって、そう思う様になった。


好きなことを仕事に出来たら。

それは、誰もが願うことだろう。


叶うかどうかなんて、分からない。

それでも、好きなことを仕事に出来たらいいと思う。



好きなことを仕事にする為に、高校2年になるよりも前から、私は動き始めた。


美術系の大学に行く。

まずは、それが私の第1目標。


美術系の大学に合格したいが為に、専門の予備校に通って。

絵の具の匂いを体に纏わせて、夢中になって絵を描いた。



夢を追いかけるだけじゃない。

千夏ちゃんや千佳ちゃんと遊ぶことも忘れなかった。


2人は、私の宝物だ。



私に、信じるということを再び教えてくれた人。

友達というものを信じさせてくれた人。


怯えもあった。

怖いとも思った。


新たな関係を築くことに。

新たな人生を歩き始めることに。



不安を払拭してくれたのだ。

千夏ちゃんの笑顔が、千佳ちゃんの言葉が、私の奥に潜む闇を薄くしてくれた。


支えられて、ともに歩いた高校時代。



「ハルー、遊ぼー!」

「ねえねえ、ハルー!合コン行こうよー。」


2人に連れられて、何度も合コンだってした。

昔の私からしてみれば、有り得ないことだ。


彼氏という存在が欲しかったんじゃないと思う。

合コンを楽しいと思うより、千夏ちゃんや千佳ちゃんと遊びたいという気持ちが強かったのだ。



< 322 / 499 >

この作品をシェア

pagetop