さよならの魔法
『ハガキ』
side・ユウキ







一生懸命になっていればいる時ほど、時間というものはあっという間に過ぎていく。


頑張って、頑張って。

ひたすら走り続ける毎日は、本当にあっという間に過ぎていって。



勉強。

部活。

遊び。


俺の中でこの3つのサイクルが、全速力で回っていた気がするんだ。




高校時代、彼女という特別な存在は作らなかった。


作ろうと思えば、作れたのだろう。

男子高ではない共学の学校だったから、出会いが全くなかったという訳でもない。



彼女を作らなかったのには、俺なりに考えた理由があった。

バカな俺が、過去を踏まえて考えた理由が。


誰かを傷付けてしまうくらいなら、誰とも一緒にいない方がいい。

特別な存在なんて、作らない方が幸せだ。


友達がいれば、それで十分じゃないか。



怖かったんだ。


また、誰かを傷付けてしまうことが。

茜と付き合っていた頃の様に、周りの人間を巻き込んで、傷付けていくことに耐えられない。



大切な人間を傷付るのは、もうたくさんだ。


自分の浅はかさで、特別な存在に選んだ女の子を傷付けたくない。

長年つるんできた友達まで、失いたくない。


思っていたよりも、俺の中で中学時代の出来事は、深く根付いていたのだ。



俺なんかのどこがいいのか。

たまに告白をしてくれる女の子はいたけれど、その告白は全て断っていた。


呆れ顔の矢田には、よく怪しまれていたが。





「なー、紺野ー!お前、また告白された?」

「何で知ってんだよ、お前………。」

「矢田くんの耳は、地獄耳なんですー。残念ながら。」


どこから、仕入れてきたのか。

俺が告白された場面を見た訳でもないのに、そんなことを知っている矢田に驚く。



「期待を裏切って申し訳ないけど、断ったから。」

「は?」

「よく知りもしないのに、付き合える訳ないだろ。」

「また断ったの?………せっかく告白してきてくれたのに。」



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