さよならの魔法
みんながいたから、今、私はここにいる。
ここに、こうして立っていられる。
自分でかけた魔法の力だけでは、きっと無理だった。
ありがとう。
私を支えてくれて。
ありがとう。
こんな私の傍にいてくれて。
本当にありがとう。
「同窓会、どうするの………?」
まだ涙を潤ませる千佳ちゃんが、私にそう聞く。
千佳ちゃんの頬に光る、一筋の涙の跡。
千佳ちゃんの言葉に、私はすっと視線を落とす。
聞かれても、すぐに答えられなかった。
答えることが出来なかった。
出たいか、出たくないか。
そう聞かれれば、出たくないという気持ちの方が圧倒的に強い。
「………分からない。」
分からない。
分からないんだ、本当に。
思い出すのは、橋野さんのあの言葉。
「磯崎さんは3年に進級する時に、転校したの。だから、3年1組には、磯崎さんの名前なんてない………。」
3年の時の学校祭の日。
私を引きずってまで教室に連れていこうとしていた橋野さんは、あの日、そう言っていた。
橋野さんのあの言葉が本当ならば、嘘ではないのなら、磯崎さんは同窓会には来ないだろう。
私の所には送られてきたこのハガキも、彼女の元には届いてはいないはずだ。
卒業間近に転校したのならばともかく、進級してからすぐに転校してしまったクラスメイトまでを呼ぶことは、多分ないだろう。
そう、信じたい。
だけど、問題はそれだけではないのだ。
私のことをいじめていたのは、何も、磯崎さん1人だった訳じゃない。
磯崎さんの周りにいた人達も、彼女と同じ人種だった。
私をからかうことで、退屈を紛らわせていた。
磯崎さんがいなくなっても、いじめていた人間が全員いなくなるんじゃないんだ。
あの教室には、まだ他にも残酷な心を持つ人達がいる。
橋野さんだっている。