さよならの魔法



「同窓会とかのハガキなんて来るとさ、ちょっと大人になった感じ………しないか?」

「ははっ、そうだな。」

「もうみんな、20歳過ぎてるからなー。酒も飲める!」



そういえば、確かにその通りだ。


俺達も、もう20歳。

いつまでも、中学生だったあの頃みたいな子供じゃない。



未成年ではないから、公衆の面前で酒だって堂々と飲める。

煙草だって、吸っても怒られる年じゃない。


成人式は、大人になる為の儀式。


大人になるということは、それだけ責任が増えるということ。

しかし、責任を負う文だけ、自由になることも多くなるのだ。



自由と責任は、紙一重のところに存在している。


大人になることは嬉しい。

だけど、責任が発生することを重いとも感じる。


いいことばかりではないけれど、そうやってまた1つ、大人になっていくのだと思う。



「なー、紺野ー。」

「ん?」

「同窓会で、めっちゃ可愛い女の子がいたらどうしよう!?」


矢田の軽い発言に呆れて、自然と溜め息が出た。



「あのな………、可愛い女の子って………いたとしても、元クラスメイトなんだから全員知り合いだろうが。」


あれから、5年もの月日が流れた。

変わらない人間もいれば、見違えるほど変わってしまった人間もいるだろう。


しかし、どんなに変わってしまったとしても、元々は同じ学校の同じクラスに通っていた人間なのだ。

当たり前のことを言う俺に、矢田がやたらと乙女な思考を展開させていく。



「ほらー、昔とは違って、大人っぽく変わっちゃってたりとかしてさ。」

「………。」

「酒も入って、いい雰囲気になって…………あー、どうしよう!」


どうもしねえよ。

そもそも、酒が入ったからといって、そういう雰囲気に持ち込めるかどうかまでは不確かだ。


妄想をひたすら広げていく矢田に、また1つ溜め息。



そういえば、矢田は昔からこういう男だった。



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