さよならの魔法
『最初で、最後の……………』
side・ハル
真冬の空の下、私が履くブーツの音だけが響いている。
カツン、カツンと。
他には、誰もいない。
他には、何の音もしない。
ああ、火照った体に、冷たい空気がちょうどいい。
いつもならば寒いくらいの風が、今だけは心地よく熱くなった体を冷ましてくれる。
心地いい風を感じ、目を閉じる。
さっきまでの喧騒が、嘘みたい。
ここは、まるで別の世界だ。
ほんの数分、歩いただけの距離の場所なのに。
目を閉じて、思い返す。
ほんとはね、行きたくなんかなかったんだ。
ギリギリまで迷っていたのは事実だし、何度も東京に戻ってしまおうかと思ったことか。
私1人なら、きっと帰ってしまっていただろう。
そもそも、ここに戻ってくることを選ばなかったはずだ。
私は、この町を捨てた人間。
ここに戻ってくることはないと、そう思っていたのだから。
千夏ちゃんや千佳ちゃんが背中を押してくれなかったら、私はあの真っ白なハガキを送り返すこともなかったことだろう。
怖かった。
だから、迷ってしまった。
また、誰かに何かを言われるんじゃないかって。
悪くないことで責められたり、いわれのないことで追い詰められるんじゃないかって。
怯えていたんだ。
虚勢を張る為に、いつもよりも時間をかけてメイクをした。
あの頃の私に見えない様に、今の私を全面に出した。
そうしないと、私は自分を保っていられなかったのだ。
正気で、あの場にいられなかったのだ。
どうして来たの?
何をしに来たの?
無口で地味なあんたなんか、いてもいなくても同じなんだよ。
教室の端で震えていた、5年前の私。
あの頃の私が、今の私に問う。
磯崎さんがいたら、どうしよう。
磯崎さんがいなかったとしても、否定的な言葉を他の人に投げかけられる可能性は消えない。
邪魔だと思われてしまったら、どうすればいい?
真冬の空の下、私が履くブーツの音だけが響いている。
カツン、カツンと。
他には、誰もいない。
他には、何の音もしない。
ああ、火照った体に、冷たい空気がちょうどいい。
いつもならば寒いくらいの風が、今だけは心地よく熱くなった体を冷ましてくれる。
心地いい風を感じ、目を閉じる。
さっきまでの喧騒が、嘘みたい。
ここは、まるで別の世界だ。
ほんの数分、歩いただけの距離の場所なのに。
目を閉じて、思い返す。
ほんとはね、行きたくなんかなかったんだ。
ギリギリまで迷っていたのは事実だし、何度も東京に戻ってしまおうかと思ったことか。
私1人なら、きっと帰ってしまっていただろう。
そもそも、ここに戻ってくることを選ばなかったはずだ。
私は、この町を捨てた人間。
ここに戻ってくることはないと、そう思っていたのだから。
千夏ちゃんや千佳ちゃんが背中を押してくれなかったら、私はあの真っ白なハガキを送り返すこともなかったことだろう。
怖かった。
だから、迷ってしまった。
また、誰かに何かを言われるんじゃないかって。
悪くないことで責められたり、いわれのないことで追い詰められるんじゃないかって。
怯えていたんだ。
虚勢を張る為に、いつもよりも時間をかけてメイクをした。
あの頃の私に見えない様に、今の私を全面に出した。
そうしないと、私は自分を保っていられなかったのだ。
正気で、あの場にいられなかったのだ。
どうして来たの?
何をしに来たの?
無口で地味なあんたなんか、いてもいなくても同じなんだよ。
教室の端で震えていた、5年前の私。
あの頃の私が、今の私に問う。
磯崎さんがいたら、どうしよう。
磯崎さんがいなかったとしても、否定的な言葉を他の人に投げかけられる可能性は消えない。
邪魔だと思われてしまったら、どうすればいい?