さよならの魔法
6年も経っているのに、変わらなかった。
変えられかった。
本当は、今も好きなんだ。
今でも、私は紺野くんのことが大好きなんだ。
だから、こうして苦しんでる。
迷ってる。
叶わないことを知って、傷付いている。
でも、だからこそあえて、好きだったと言った。
わざと、過去形の言葉を選んだ。
今の私が伝えるべきなのは、あの頃の自分の気持ち。
中学生だった頃の、私の気持ちだ。
今の私のことじゃない。
報われない恋。
叶わない想い。
忘れられなかったのは、恋が報われなかったからじゃない。
想いが叶わなかったからじゃない。
自分の口で、自分の言葉で伝えられなかったからだ。
他人の言葉で、勝手に暴かれてしまったから。
だから、今、伝えるんだ。
6年も経ってしまったけれど。
遅くなってしまったけれど、あの頃の私の気持ちを。
好きだった。
初めて会ったその日から、あなたに惹かれていた。
ほんとに大好きだったの。
大嫌いだった学校に行くのが楽しく思えるくらい、あなたに会えることが楽しみだった。
「さよなら、紺野くん………。」
もう会わない。
私と紺野くんが出会うことは、きっとないのだろう。
遠い街に住んでいる私と彼が、再び顔を合わせる可能性は0に近い。
私がここに戻らない限り、彼との接点は消える。
呆気ないほど、簡単に。
関わりなんて、元から少なかった。
接点なんて、同じ学校だったこと以外になかったのだから。
どちらかが会おうと努力しなければ、会うことのない関係だ。
私、紺野くんのことが好きだった。
紺野くんのことが大好きだったよ。
初めて、好きになった人。
私に、温かい気持ちを教えてくれた人。
恋することの切なさも、全て教えてくれた。
紺野くんが、私に教えてくれたんだ。
悲しいデートの結末は、自分で決めたもの。
自らの手で、幕を引いた。