さよならの魔法
駅のすぐ近くにある、児童公園。
公園のすぐ脇には、単線の線路がある。
公園とは言っても、その規模はとても小さなもの。
ジャングルジムとシーソー。
滑り台に、ブランコ。
4つの遊具しか、ここには置かれていないのだ。
この公園には、幼い俺の思い出が詰まってる。
一目見ただけで、体中から懐かしさが溢れ出すのだから。
友達と競ってまで登った、ジャングルジム。
どこまで高く飛べるのか、いつも試していたブランコ。
並んで順番待ちをした、滑り台。
お尻が痛くなるまで飽きなかった、シーソー。
この公園は、俺が通っていた小学校からも家からも近い場所にある。
小さなこの児童公園は、幼い俺の縄張りの中にあったのだ。
この公園は、俺のホームグラウンドみたいな場所なのだ。
小学生だった俺の、拠り所みたいな場所だった。
さすがに中学生になってからは、ここに来る機会は減ってしまっていたけれど。
それでも、高校を卒業するまでは、何度となく寄り道をした場所だ。
「うわー、この公園に来るの、すっげえ久しぶりだー!」
こっちに帰ってきてからも、日頃の疲れのせいもあって、ここに来ることはなかった。
大人になった自分に、ここに来る用事を見つけ出すことは出来なくなっていたんだ。
まさか、またここに来れるなんて。
しかも、あの天宮と来ることになるなんて。
弾んだテンションのまま、ジャングルジムに駆け上がる。
ああ、我ながらガキ過ぎる。
成人式を迎えたというのに、中身は大して変わっていないんだ………きっと。
精神年齢なんて、あの頃と同じなんじゃないか。
呆れられてしまいそうだ。
そう思っていたけれど、天宮はジャングルジムの下で微笑んでいた。
貴重に思えるその微笑みを、俺に向けてくれていた。
「………。」
内心は、その微笑みとは別なのかもしれない。
本当は、呆れて見ているだけなのかもしれない。