さよならの魔法
もう、そんな風になりたくない。
そういう自分に戻りたくない。
こんな自分に、恋愛する資格なんてあるのだろうか。
そう思っていた時期があったのも、また事実。
恋愛することから逃げていた俺が、久しぶりにドキドキしてる。
それも、初めて会ったのではない人に。
既に、出会っている人に。
分かってるんだ。
ほんとは、気が付いてる。
俺は、天宮に心を揺り動かされてる。
あの天宮に、惹かれ始めている。
自覚してしまったのだ。
芽生え始めたばかりの恋に。
いや、違う。
芽生えていたのに、ずっと気付けずにいた小さな恋に。
最後に乗ったのは、ブランコだった。
幼い頃には大きく感じていたブランコも、今、乗ってみれば小さな乗り物だ。
ブランコに立って乗れば、ブランコを吊っている天井にさえ手が届いてしまいそうな気がする。
手が届いてしまいそうなほど小さなブランコを、力の限りに漕ぐ。
ユラユラ揺れる、ブランコ。
俺の漕ぐブランコが、空高く舞う。
このまま漕ぎ続けたら、空を飛べるかな?
どこまでも、いつまでも、君の隣を飛んでいられるのだろうか。
ブランコだけじゃない。
空高く舞う今は、星にさえ手が届いてしまいそうな気になってしまう。
ブランコに揺られながら、ずっと考えていた。
気付いてしまった、この気持ち。
感じている、この想いのこと。
勘違いだ。
思い違いだ。
何度も、そう思い込もうとした。
気のせいだろ?
久しぶりに会えて気持ちが高ぶっているから、そう思っているだけだ。
何度も、自分にそう問いかけた。
しかし、返ってくるのは、速くなるばかりの心音だけ。
止められない鼓動だけが、答えを自然と導いていく。
分かっているのに。
気が付いてるクセに、恋愛から遠ざかっていたせいか、答えから逃げようとしてしまう。