さよならの魔法
ドクン。
ドクン、ドクン。
気の迷いだって。
勘違いなんかするなよ。
否定しろよ。
否定してくれよ。
だけど、誰も否定なんてしてくれない。
当たり前だ。
否定なんて、してくれる訳がない。
俺の気持ちは、俺だけのものだ。
俺の心は、俺だけしか知らないのだ。
俺以外の、誰が否定するんだ。
俺はーーー………
俺は、天宮のことが好きだったんだ。
おそらく、中学生だったあの頃から。
どうして、今になって気が付いてしまったのだろう。
どうして、今更、自覚してしまったのだろう。
5年も経った今になってから、自分の本当の気持ちを思い知るなんて。
いじめられているから、気になっているんだと思っていたんだ。
磯崎達にいじめられているから、目で追ってしまうのだと思い込んでいた。
同情からくる思いで、天宮のことを救ってあげたかったんだと思っていた。
同情していたのかと問われれば、違うとは言えない。
確かに、同情してた。
俺は、天宮のことを可哀想なクラスメイトとして見ていたことは否定出来ない。
正義感から、助けてやりたいと思う気持ちもあった。
それは、嘘じゃない。
だけど、それだけじゃなかった。
それだけじゃなかったんだ。
気になっていたのは、惹かれていたから。
助けてあげたいと思ったのは、好きだったから。
さっき松島にイラついてしまったのは、天宮に引っ付く松島に妬いていたからだ。
好きだった。
俺は、天宮のことが好きだったんだ。
他の女の子と付き合っていたのに、心のどこかで天宮に惹かれていた。
他の女の子の隣にいながら、天宮のことを見ていたんだ。
俺は。
今となっては、どちらが先だったのかさえ分からない。
茜と付き合い始めたのが、先だったのか。
天宮を気になり出したのが、先だったのか。
どちらにしても、自分が最低であることには変わりない。