さよならの魔法
それは、昨日と同じ。
まるで、同じ光景を見ている様だった。
「………。」
「天宮さんは、ただのクラスメイトじゃない!ユウキとは、何の関係もないじゃない………!!それなのに、どうしてあの子の後を追うの!?」
尋問されてるみたいだ。
問い詰められ、追われ、崖の上に立たされているみたいで。
いい気分はしなかった。
俺の反応を見ずに、茜は続ける。
「天宮さんとユウキって、仲良くなんかなかったよね?友達なんかじゃなかったよね………。」
「………。」
「友達でもないのに、どうして?」
そうだ。
茜の言葉の通りだ。
俺と天宮は、友達なんかじゃなかった。
クラスメイトの1人というだけで、関わりだって限りなく薄いものだった。
3年間、同じクラスだったというだけ。
友達でもない。
仲良くもない。
茜の言葉のまんまだよ。
だけど、俺は追いかけた。
ただのクラスメイトでしかなかったけれど、俺は天宮の後を追ったんだ。
追いかけたのは、ありがとうという言葉を伝えたかったからだけじゃない。
今、思えば、あれは本能だった。
本能からくる欲求に近いものだった。
本能って、怖い。
建前も見栄もプライドもなく、そのまま気持ちが出てくる。
心の奥では、分かっていたのだろうか。
俺は。
天宮のことが好きなのだと。
本当はずっと前から、天宮のことが気になっていたのだと。
だから、俺は追いかけた。
茜を振り払ってまで、天宮のことを追ったんだ。
「茜、俺………好きな子がいる。」
呟く様に、そう告げた。
付き合っていた過去の彼女に、残酷な事実を突き付けた。
ほんとは、本人に真っ先に言いたかったこと。
茜よりも、誰よりも、天宮本人に伝えたかったこと。
君が好きだ。
もうずっと前から、君のことが好きだった。
呟いた言葉が、白い息とともに空に昇っていく。