さよならの魔法
『解放』
side・ハル
長い時間、電車に乗って、窓の外を眺めていた。
流れていく景色を、ずっと眺めていた。
田んぼや畑ばかりの風景が、だんだんと変わっていく。
ビルや大きな看板が目立つ、都会的な街並みへと少しずつ変化していく。
思えば、いつも違った気持ちで、この景色を眺めていた。
初めてこの景色を見たのは、15歳の時。
両親が離婚した直後のことだった。
しがらみが被いあの小さな町を抜け出せる喜びと、好きな人と離れなければならない悲しみと、相反する複雑な気持ちに揺られながら、この景色を見つめていたんだ。
もう2度と、この景色を見ることはないだろう。
この町に戻ることはないだろうと、そう思っていたから。
故郷から離れていくほど、目に焼き付けておこうと思ったのをよく覚えている。
2度目は、20歳。
5年ぶりに、ふるさとに戻った時。
ほんの数日前のことだ。
戻ることはないと心に決めていた場所に戻ることになって、私の表情はとても暗かったと思う。
都会的な街並みが田舎の農村風景に変わっていくのを見て、心が沈んで落ちていくのが分かった。
何か、言われてしまうのではないか。
来なくても良かったのにと、歓迎されないのではないか。
彼は、紺野くんは、私が来ることを望まないのではないか。
そう考えると、不安で堪らなかった。
それほど不安を感じていた私だけれど、今はそんな不安を感じてはいない。
行かなくて良かったとも、思っていない。
後悔もない。
あの時、紺野くんが言ってくれたから。
ありがとうって、そう言ってくれたから。
紺野くんは、律儀な人だ。
6年前のバレンタイデーのチョコレートのことなんて、忘れられていてもおかしくない。
付き合っていた彼女でもない、ただのクラスメイトからのチョコレートなんて、忘れられていて当たり前なのに。
長い時間、電車に乗って、窓の外を眺めていた。
流れていく景色を、ずっと眺めていた。
田んぼや畑ばかりの風景が、だんだんと変わっていく。
ビルや大きな看板が目立つ、都会的な街並みへと少しずつ変化していく。
思えば、いつも違った気持ちで、この景色を眺めていた。
初めてこの景色を見たのは、15歳の時。
両親が離婚した直後のことだった。
しがらみが被いあの小さな町を抜け出せる喜びと、好きな人と離れなければならない悲しみと、相反する複雑な気持ちに揺られながら、この景色を見つめていたんだ。
もう2度と、この景色を見ることはないだろう。
この町に戻ることはないだろうと、そう思っていたから。
故郷から離れていくほど、目に焼き付けておこうと思ったのをよく覚えている。
2度目は、20歳。
5年ぶりに、ふるさとに戻った時。
ほんの数日前のことだ。
戻ることはないと心に決めていた場所に戻ることになって、私の表情はとても暗かったと思う。
都会的な街並みが田舎の農村風景に変わっていくのを見て、心が沈んで落ちていくのが分かった。
何か、言われてしまうのではないか。
来なくても良かったのにと、歓迎されないのではないか。
彼は、紺野くんは、私が来ることを望まないのではないか。
そう考えると、不安で堪らなかった。
それほど不安を感じていた私だけれど、今はそんな不安を感じてはいない。
行かなくて良かったとも、思っていない。
後悔もない。
あの時、紺野くんが言ってくれたから。
ありがとうって、そう言ってくれたから。
紺野くんは、律儀な人だ。
6年前のバレンタイデーのチョコレートのことなんて、忘れられていてもおかしくない。
付き合っていた彼女でもない、ただのクラスメイトからのチョコレートなんて、忘れられていて当たり前なのに。